歌声は年齢とともに少しずつ変化していきます。「若い楽に出ていた高音が年齢が上がってでなくなった・・・。」安心してください、それは自然なことです。
声帯は筋肉と粘膜でできており、体と同じように成長し、老化もします。スポーツに年代別の練習法があるように、歌にも年齢ごとのアプローチが必要です。ここでは年代別の声帯の特徴と効果的なトレーニングを紹介していきます!
なぜ年齢ごとの声帯トレーニングを知る必要があるのか
年代ごとの声帯を知ることでトレーニングの本質を知ることができ、効率的にトレーニングを行うことができるようになります。
この章ではなぜ「年齢に応じた声のトレーニング」が必要なのかを、声帯や息の流れから考えてみましょう。
声帯は「筋肉」であり年を重ねるから
声帯は、筋肉と粘膜の組み合わせでできた繊細な構造です。
体の他の筋肉と同様に、成長・加齢・体調などの影響を大きく受けます。例えば顔の筋肉が加齢によって段々とハリがなくなりタレてくるのと同じで、声帯の厚みや弾力、動きの精度も、年齢とともに変化していきます。
年齢によってプールでの運動や激しい坂道の走り込みなど、適切な運動方法が違うように、効果的なトレーニング方法が異なります。
加齢によって声の質に変化があらわれるから
年齢によって声帯の状態は違います。
10代のころの声帯は薄くて柔らかく、比較的高音が出やすい傾向があります。
一方、年齢を重ねていくと、声帯の筋力が落ちたり、粘膜が乾燥しやすくなったりして声に変化が現れます。
声が変わると得意な音域や、身体の感覚もかわってきます。
昔の感覚のまま練習を続けると喉をいためる原因にもなるので、そういった理由からも年齢ごとのトレーニングを知る必要があるといえるでしょう。
年齢別にボイトレをしたい方はこちら!悪いフォームを身につける危険性があるから
「昔はこうやって声を出していたから、今もそれでいい」
そう思って歌の練習をすると本来自分が出せる声の出し方と違うクセがついてしまいます。
そうすると本来自分が持っているポテンシャルを発揮することができなくなり、歌うことが辛くなってしまいます。
年齢に応じた自分のポテンシャルを引き出すためにも、年齢ごとのトレーニングの仕方を学ぶことは大事だといえるでしょう。
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年齢ごとの声帯の状態
声帯は、年齢によって構造も働き方も大きく変わっていきます。
ここでは、年齢ごとの声帯の状態をより詳しくみていきましょう。
幼児〜小学生:神経回路を育てる「運動神経の芽⽣え」
この時期の声帯は非常に軽くて薄く、柔軟性に富んでいます。
高い音を楽々と出すことができる一方で、筋力やスタミナはまだ未発達。長時間の大声や連続した発声には不向きです。
スポーツでいえば「⾛り回ったり体の使い⽅を学ぶ時期」にあたります。
体を鍛えるよりも、まずは自由に動かす神経回路を育てることが大切。声も同じで、「遊びながら音に触れる」ことが、のちの発声力につながります。
思春期(中高生):フォームが⼤きく揺れる「成⻑期のスポーツ選⼿」
変声期に入ると、声帯は一気に長く・厚くなります。
特に男子では声質の変化が顕著に現れます。
声が裏返る・出しにくくなるなどの現象は、まさに成長に身体が追いついていない証拠。
これはスポーツでいえば「背が伸びてフォームがぎこちなくなる学生アスリート」と同じです。
筋⾁のコントロールが追いつかず 「不安定」 になりやすく、 昨⽇出た⾳が今⽇は出ないなんてこともあります。
この時期は無理な⾼⾳練習はケガのもとです。
青年・壮年期(19〜40代):ピークを⽣かす「全盛期アスリート」
この年代は声帯筋の厚み・弾⼒・回復⼒がピークを迎えます。
豊かな声の響きに必要な共鳴⼝(⼝、⿐腔など)の⼤きさも安定します。
スポーツでいえば「筋⼒・スピードともに最も伸びるアスリートの⻩⾦期」です。
この時期に⼤事なのは「効率の良い声の仕組みづくり」
この時期に、発声法をしっかり定着させることが、その後の「声の老化防止」にもつながります。
中高年期(41〜59歳):持久⼒を養う「ベテラン選⼿」
40 代以降になると、声帯筋の厚みは少しずつ減り、粘膜も乾燥しやすくなります。
スポーツでいえば「瞬発⼒はまだ⾼いが、回復⼒が落ち始めるベテラン期」。
研究によると、この時期から声は疲れやすくなり、⾼⾳が出にくくなる傾向があります。
そこで有効なのが呼吸筋トレーニング。 最⼤吸気・呼気圧が⾼まり、⻑いフレーズを⽀える余裕が出ます。
さらに、 ⽔分補給と加湿は必須。声帯表⾯の潤いは「筋⾁にとっての柔軟性」と同じ。
粘膜の⽔分が減ると声帯振動の効率が下がってしまいます。
スポーツでいえば「ストレッチとアイシングを⽋かさないベテラン選手」と同じです。
年齢別にボイトレをしたい方はこちら!高齢期(60歳以上):声を使い続ける「シニアアスリート」
60 歳を超えると、声帯の筋⾁は痩せ、粘膜の弾⼒も減少します。
その結果、声がかすれたり、 息が漏れたりしやすくなります。
これはスポーツで「筋⼒と柔軟性が落ちるシニア選⼿」と同じ現象です。
でもここで⼤切なのは、「声を使い続けること」。
研究でも、⾼齢者が合唱に定期的に参加することで、話し声の明瞭さや⽣活の質が保たれることが報告されています。

年齢ごとのトレーニング内容
それではいよいよ、年代ごとにおすすめのボイストレーニング法を紹介していきます。
自分の今の状態を考えて、効率的にトレーニングをしていきましょう。
幼児〜小学生のトレーニング
この年代で大切なのは、筋⼒トレーニングではなく「動きの神経回路」を育てること。
まだ声帯周りの筋肉は未発達なため、長時間の発声や無理な高音は負担になります。
おすすめなのは、以下のような“遊びの中で発声に触れる”方法です。
・コール&レスポンス(呼びかけの真似)
「おーい」と呼んだあとに「おーい」と繰り返してもらう。
なれてきたらランダムに言葉を投げて、それを同じ用に繰り返して返してもらう。
短い言葉で大丈夫です。
・手拍子やステップを使ったリズム遊び
「うん、たん」といったフレーズで手を叩いたり、手遊び歌などでリズムをとっていきましょう。
・短く区切ったフレーズを歌う
好きなミュージカルや流行りの曲の一節を定期的に歌いましょう。
こうした活動は、聴覚と発声をつなぐ神経ネットワークを強化し、将来的な音感やリズム感の土台を育ててくれます。
思春期のトレーニング
この時期は、声帯の構造が急速に変化する「声の思春期」です。
無理な高音練習は避けましょう。
・ストロー発声やリップロール(喉にやさしい練習)
・その⽇の“楽な⾳域”で歌う
これは「軽い負荷でフォームを整える基礎ドリル」にあたります。
声帯にやさしい息の圧をかけて鳴らすことで、無理なく響きの感覚をつかめます。
声の変化は⾃然なものなので、焦らず寄り添うのが⼀番の近道です。
青年・壮年期のトレーニング
声帯の筋肉・粘膜の質・回復力が最も充実するこの時期は、「鍛えどき」です。
効率を考えながら、適切にきたえていきましょう。
① 持続⺟⾳のエクササイズ(スタミナ強化)
・「イー」の声を出す
・できるだけ⻑く、安定して伸ばす
・声が揺れないように、同じ⾳量・⾳質を保つ
② ⾳程上昇エクササイズ(ストレッチ)
・低めの声から始める
・「ウー」と発⾳しながら滑らかに、可能な限り⾼⾳まで声を上げていく
③ ⾳程下降のエクササイズ(収縮)
・⾼めの声から始める
・「ブー」と発⾳しながら滑らかに、可能な限り低⾳まで下げていく
④ ⾳階エクササイズ(協調性)
・「オー」と発⾳しながら 5 ⾳階(ド〜ソ〜ド)を上り下りする
・⾳を外さず、声の響きをそろえる
これらを毎日短時間ずつ積み重ねるだけで、声の質が着実に変わってきます。
中高年期:呼吸筋トレーニングと保湿習慣
40代以降は、瞬発⼒はまだ⾼いが、回復⼒が落ち始めるため、呼吸筋トレーニング+声帯ケアの組み合わせが最適でしょう。
・風船をふくらませる練習(呼気圧を高める)
こちらの動画の4:40あたりからです。
こういった風船を使った練習で呼気圧をたかめることができます。
・ストロー発声
・青年・壮年期のトレーニングの繰り返し
高齢期のトレーニング
・ストロー発声で声⾨閉鎖を補助
・レゾナント発声(声を顔の前に響かせる感覚)で楽に響かせる
・青年・壮年期のトレーニングの繰り返し
・定期的な歌の習慣
⽇常的に声帯を刺激して若さを保ちます。合唱やカラオケは「仲間と楽しむシニア運動サークル」。
歌は⼼と体の健康を同時に⽀えてくれる活動なのです。
長く歌うために必要なこと
歌は、才能や若さだけで続けられるものではありません。
声帯は年齢とともに変化していくので、その変化とうまく付き合いながら使い続けることが、なにより長く歌う秘訣になります。
ここでは何歳になっても歌を楽しみ続けるために意識したいポイントを紹介します。
声も筋肉も「使い続けること」が何より大事
声帯は「使わないと衰える」。これは、多くの研究で明らかになっています。
声帯は筋肉でそれを支える首周りの筋肉もまた、歳とともに衰えます。
日常的に発声する機会をつくって、声を明瞭に保ちましょう。
生活習慣をととのえる
意外と見落とされがちなのが、日常生活の中にある「声に悪影響を与える習慣」です。
- 就寝中の口呼吸やいびき:喉の乾燥を招く
- カフェインやアルコールの多量摂取:粘膜の水分を奪う
- タバコや加湿不足:喉の炎症の原因
これらを改善するだけで、喉の状態が劇的に変わることもあります。
声のトレーニングとあわせて、「喉に優しい生活習慣」を意識すること。
それが長く歌い続けるうえでの下支えになります。
まとめ
いかがだったでしょうか?
声は年齢とともに変わりますが、正しく向き合えば、何歳からでも育て直すことができます。
もちろん個人差があるので、一概に「必ずこうだ!」とはいえませんが、自分の身体の状態と向き合って、ぜひ自分にあったトレーニングをこころがけてみてください。
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