「ファルセット」と聞いたことはあるかもしれませんが、その具体的な意味を聞くと意外と言い淀んでしまう人が少なくありません。
ここではそもそも「ファルセットとは」という話から、実際にどう出すのかトレーニングも含めた実践的な内容をお伝えしていきます!
ファルセットとは、どんな声?
ファルセットといわれると「裏声とどう違うの?」と疑問に思う方も少なくありません。
ここでは、ファルセットの定義や特徴、そして地声・裏声との違いについて整理していきます。
ファルセットは「息の多い裏声」
ファルセットとは、一般的に「裏声の一種」とされていて、裏声の中でもとくに息漏れが多く、空気を多く含んだ柔らかい音とされています。
声帯がぴったりと閉じず、隙間を開けたまま振動するため、芯のある響きというよりは、ふわっとした印象の音になります。
「ヘッドボイス」と混同されることもありますが、「ヘッドボイス」の場合は、声帯が閉じ振動が多いことから「芯のある裏声」というような表現ができるのに対して、ファルセットは「芯を抜いた裏声」であり、より高音にアプローチがしやすいというのも特徴としてあります。
この違いを意識することで、音色のコントロールが格段にしやすくなります。
地声と裏声の違いに注目する
地声(チェストボイス)は、日常会話や力強い歌声で使われる音。
海外のアーティストでいうとSiaなどはよくこのチェストボイスを多様します。
声帯がしっかり鳴り、胸に響くような感覚があります。
一方、裏声(ヘッドボイス)は、声帯が薄く閉じ、頭に響かせるような感覚で高音を出す方法です。
ファルセットは、この裏声のさらに外側にあるような、より軽く、息が先行する発声方法で、いわゆるミックスボイスの高音のような音とは一線を画します。
裏声=ファルセットというわけではないということに注意しましょう。
ファルセットが使われる場面
ファルセットは、特に女性ボーカルが高音域を自然につなぐ際に多く登場します。
バラードのサビ、R&BやJ-POPでの繊細な表現、感情の揺れを伝えたい場面などで使われることが多く、力強さというよりは「儚さ」や「透明感」を演出するのに向いています。
男性にとってはファルセットは日常的に使うほどの音域ではないこともありますが、それでも表現の幅を持たせたいときには有効な技法となります。
特に「フェイク」のようなテクニックを綺麗に見せたいときはこのファルセットを使いこなしてあげるととてもうまく聴こえます。
こちらの冒頭のような「フェイク」もしっかりファルセットを使いこなしているからできることなのですね
ファルセットの出し方とコツ
ファルセットは一部の人だけが出せる特別な声ではありません。
呼吸と喉の使い方に気をつければ、誰でも練習によって習得できる発声方法です。
ここでは、初心者でも取り組めるファルセットの出し方と、その練習のポイントを紹介します。
息の流れを感じるところから始めよう
ファルセットの大前提は、「息を流す」こと。
声を出す前にまず、安定した息を長く吐けるようにしておきましょう。
これは腹式呼吸の基本にも通じます。
息の流れを感じるのが難しい人は手を筒にして、「フーッ」と吹き矢を吹くように細く長く息を吐く練習から始めてみてください。
できれば5〜10秒以上、一定の速度で息を吐けると理想的です。
この段階で「喉に力を入れない感覚」を掴むことも重要です。
軽く声帯を閉じる練習
息が安定して流れるようになったら、そこに軽く声を乗せていきましょう。
「ホー」「フー」といった柔らかい母音で、息にほんのり声を加える感覚で発声します。
音程は中〜高音域を意識すると、自然とファルセットに近づいていきます。
ここで意識したいのが「喉を締めないこと」。
ファルセットは芯を抜いた、軽く空気を含んだ声です。
芯のある裏声とは違う「ふわっとした軽さ」を出すには、リラックスした状態が大前提となります。
そのまま背中から持ち上げるような感覚を持ってあげると、どんなに慣れない人でも少しはファルセットの元のようなものを感じることができるはずです。
ファルセットを得意とする歌手たち
ファルセットの発声法を理解したあとは、それをどう音楽の中で活かすかが次の課題になります。
そのヒントとして、有名アーティストたちのファルセットの使い方に注目してみましょう。
男性アーティストのファルセット
男性ボーカルにおいて、ファルセットは高音表現の要ともいえる存在です。
たとえばビッケブランカさんなんかはファルセットをよく取り入れるアーティストのひとりです。
「かなしまない だってさよならじゃない」の部分はファルセットでメロディにアクセントを付け足しています。
これ以外にもKing gnuの井口さんなどもファルセットを得意とする男性アーティストといえるでしょう。
ぜひチェックしてみてください。
女性アーティストのファルセット
これはPark kiyoungという韓国の歌手ですが、ファルセットを上手に使いこなしています。
ファルセットをうまく使いこなすとこれほどまでに高音がだせるといういい例でしょう。
高いながらも、どこか揺れるような儚さが感じられるのがファルセットの特徴です。
また中島美嘉さんもファルセットを得意とする女性アーティストの一人です。
「雪の華」はまさにその代表といえるでしょう。
雪が舞うように、声も自然と舞って聞こえるようです。
ファルセットをマスターするメリット
ファルセットを自在に使えるようになると、単に高音が出るというだけではなく、歌全体の「緩急」や「陰影」をつけることができるようになります。
地声との切り替えによって曲にダイナミクスが生まれ、聴き手に深い印象を与えることができます。
また、ファルセットを意識して練習する過程は、声帯の使い方や呼吸のコントロールの向上にもつながるため、歌全体のスキルアップにも効果的です。
ファルセットが上達する練習
ファルセットをしっかりと出せるようになるためには、ただ何となく歌っているだけでは難しいものです。
ここでは段階的に効果を高める、実践的な練習方法を紹介します。
ロングトーンで息を整える
ファルセットは息を多く使う発声法なので、まずは息を長く安定して出せるようにする必要があります。
声を出すときの第一歩として、「ホー」「フー」などの母音でロングトーンの練習をしてみましょう。
ゆっくり息を吸い込む<4秒>
鼻から息を吸い、お腹がふくらむのを感じましょう。
胸ではなくお腹が動くことを意識します。
息を「スー」と吐く<10秒>
このとき、お腹が凹んでいく力を打ち消すようにお腹をおおきく保つ外に膨らむ力を意識してあげましょう。
あくまでも呼吸は一定で。
慣れてきたら15秒、20秒と時間を伸ばしていきましょう。
こういったかたちでリズムに合わせて息を吐いてあげるかたちでも大丈夫です。
ポイントは「長く・安定して・お腹を使って」吐くこと。
音を出さなくても、これだけで声の支えが変わってきます。
音階で徐々に高音へ
次に、ピアノアプリやキーボードを使って、半音ずつ音階を上げ下げしながら発声していきましょう。
ファルセットで音階練習をすることで、高音域での安定性が養われていきます。
「ほ」などで音階をスライドさせていくことでより音のつながりを意識していくことができます。
リップロールで声帯を解放する
練習の導入としておすすめなのがリップロールです。
唇を「プルプル」と震わせながら息を吐くことで、喉をリラックスさせたまま、息のコントロールと発声の準備が整います。
これはファルセットに限らず、あらゆる発声練習の前に使える万能なウォーミングアップですが、ファルセットのような繊細な発声においては特に有効です。
力みがちな人には特におすすめです。
リップロールは、唇を軽く閉じて「プルプルプル…」と振動させるエクササイズ。
喉の筋肉をリラックスさせ、発声前の準備運動としても最適です。
ピアノの音階に合わせて上下に上げ下げしてトレーニングしてあげましょう。
こうしたトレーニングをすることで、息が流れる感覚をつかむことと、地声を鳴らすトレーニング両方を行うことができます。
まとめ
いかがだったでしょうか?
ファルセットは、適切にトレーニングをすれば、誰でもコントロールできる、美しく響かせることができる音色です。
ZIGZAGミュージックスクールでは独学では学べないより詳しい発声メカニズムに基づいた練習を行うことができます。
仕組みがわかったあとは、すぐに身体を動かして発声!そんな環境がそろっています。
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まずは呼吸と喉の使い方を丁寧に見直し、徐々に自分の中にあるファルセットの感覚を見つけていきましょう。
あの憧れのアーティストのような「ふわっとした高音」を、ぜひあなたの武器にしてみてください。