DECO MUSIC SCHOOL(立川)と
ZIGZAG MUSIC SCHOOL(吉祥寺)にて
イラストレーターコースを担当している佐藤篤と申します。
音楽やダンス関連のコースが多く展開される中で方向性が若干異なる分野になりますが、
SNSプロフィールやMVなど音楽とイラストは親和性の高い表現であると考えています。
しかし、実際にペンを握って「さあどうぞ」と促してみても、事ある毎に筆が止まってしまいなかなか作品が完成しないはずです。
そこには3つの原因が考えられます。
①ハードウェア・ソフトウェアの使い方
②身体や目の動かし方
③完成図が曖昧
①に関してはイラストに限りませんが、ペンタブレットやイラストソフトの使い方が分からなければそもそも何も出来ません。作業を効率化するための様々な便利機能や複雑な表現をする場合の様々な技術などが前提条件としてある程度は必要になります。
この問題は単純に「教われば誰でも同じように出来る」ようになります。
②に関しては意外に思われるかも知れませんが、イラスト制作において身体、特に腕と指の動作を精密にコントロールする技術は非常に重要になります。iPadや液晶タブレットのような画面に直接描画するデバイスであってもきれいな整った線を引くのは難しいです。
ペンを動かすだけでなく筆圧やペンの傾け具合も最近のデバイスはしっかりと反映されますので、毛筆で文字を描くときと同じような感覚を身につける必要があります。そういった点では技術・知識よりも身体の制御の方が優先して習得すべき内容とも言えます。
身体の動かし方・制御のしかたというのは「知識」だけがあっても思い通りの結果にならないことが多いので、試行錯誤を繰り返す必要があります。
③はある程度制作に慣れてきた方が直面する課題になります。
「描きたいものが思い浮かばない」
「描いてもイメージ通りにならない」
これらは描き始める際の「こういうイラストが描きたい」というイメージが曖昧なまま清書段階まで進んでしまうことが原因である場合が多いです。厳密には違うのではないかと思っていますが、この状態を「スランプ」と考える方もいらっしゃいます。
例として、
「可愛い女の子の絵が描きたい」
「イケメンな男性の絵が描きたい」
というところからスタートするのは良いのですが、
そこに「あなたの考える『可愛い / イケメン』とは何か?」という要素の深掘りが必要になります。
図書館で読書している姿が可愛いと感じる人もいれば、口いっぱいにスイーツを頬張る姿が可愛いと感じる方もいます。スポーツ選手やアイドル、サラリーマンなど職業毎にイケメンの基準も差があるでしょう。
まずはこういった『要素』を細分化していき、それらを全て含んだ姿になるように描き始めます。あまりにも要素をよくばりすぎると全てを表現することが難しくなるので、その際は逆に要素を削ることも必要になります。
次に完成図のイメージに最も深く影響するのが「シチュエーション」の深掘りです。 例えば「通学」というシチュエーションを深掘りして「電車に乗り遅れそうになる女子学生」というイラストにしようと考えたとします。 キャラクターはどのようなポーズをしていると想像しますか?
キャラクターの要素が文字で表せたのと異なり、シチュエーションの要素追加にはアニメーション化して考えることが効果的です。
背景イラストに加筆する形でキャラクターを4パターン描いてみました。
A:「よかった…まだ閉まってない!」
B:「待って~!乗ります~!!」
C:つまづいて転びそうになる
D:「間に合った…!」(息を荒げる)
これらはアニメーションとしてはどのシーンも必要性がある動作で、イラスト単体としても成立するポーズになります。しかしどのシーンを最初に思い浮かべたかは人によって異なりますし、
そもそもカメラアングルが全く異なるかもしれません。
私は最初にBのイメージで描き始めたのですが、もう少し自然な動作で表現出来ないかと悩んだ際に他のパターンを加筆してみた次第です。今後キャラクター+背景のイラストを描く場合はなるべく背景イメージをしっかりと整えておき、その背景の中にキャラクターを動かしてあげるイメージがあれば曖昧だった作品の完成イメージが徐々に明瞭になっていくことと思います。
キャラクターのポーズでもアニメーション化して考えることは役立ちます。 例えば手の形状1つとって見てもどの角度が一番最適なのかは検討の余地があります。
正直白紙の状態からここまで持っていくのはコストがかかりますが、
これをイラストの「設計図」とすれば清書作業へ安心して進むことが出来るようになります。
逆にいえば、この作業は初期段階だから出来ることです。
完成間際になってこのレベルの修正が必要になると地獄を見ます。
デジタル制作はワンクリックで数百工程を一気に巻き戻すことも可能ですが、その分苦労を後回しにしがちです。修正のしやすい初期段階に一番多く時間投資することが結果として気持ちよく絵を描くことにつながるのではないかと考えています。
シチュエーションの深掘りというのは知識そのものよりも「経験」に大きな影響を受けます。こればかりは言葉や文字だけでは身につけることが困難ですが、効果的な思考方法として「なぜ?」と自分自身に問いかけることが重要だと考えています。
「なぜ」そのシチュエーションを描きたいと思ったのか?
「なぜ」その色で描いたのか?
「なぜ」そのアングルで描いたのか?
しっかりと練り込まれたシチュエーション描写が出来るようになると、
作品のどこを「なぜ?」と指摘されても説明が出来るようになります。
(それが表現技法として正しいかどうかは別として)
満足いく作品が描けても説明が出来ない部分は「偶然うまく描けた」可能性があり、次回以降の作品では表現出来ない可能性があります。これを「スランプ」と考えて意気消沈している方を多く見かけます。
①や②の段階でお悩みの場合は教室でのレッスンがおすすめですが、③のようなある程度描き慣れている方の場合ですとオンラインレッスンにおける添削も可能です。第三者目線での添削などを受けることで新たな課題が見つかることもあります。
ご興味があれば是非、体験レッスンにお越しください!