こんにちは。ZIGZAGの岡です。
不安対策について
今回は、「歌を作って人前で発表したいけど、不安なんだよなー…」という方に向けて、心理学的知見に基づいて3つの観点から、対策をお伝えしてみたいと思います。
本来は、「愛着スタイル」といって、幼いころの親との関係に基づく対人関係のクセを示す理論に基づいて説明するのですが、ものすごく長くなってしまうので、もう少し柔らかく書いてみます。
1. 自己理解と感情の言語化:自分の内面に気づく力を育てる
他者からの拒絶へ過敏になったり、自己評価の不安定さを感じることはありますか?
このような傾向を持つ方は、歌を制作する際には、まず自分の感情や思考を整理して、言葉にする力が役に立ちます。
実践方法:
日記や詩を書く習慣を持つことで、自分の気持ちに言葉を与える練習をします。特に「なぜ自分はこう感じるのか?」を掘り下げてみることが、歌詞の内容を深める鍵にもなります。
アメリカの心理学者James Pennebaker(1997)は、「感情表現を伴う文章を書くことが、精神的な健康と創造性の両方に良い影響を与える」と報告しています(Pennebaker, Opening Up: The Healing Power of Expressing Emotions)。
不安を感じる場面や記憶を書き出し、それを「物語」や「比喩」に変換してみましょう。直接的な表現が難しい場合、風景や夢を用いた象徴的な歌詞が有効です。
2. 安全な表現の場づくり:評価を恐れずに試せる環境の確保
他者の評価に対して過剰に敏感で、創作物を公開する際に強い不安を感じやすい傾向はありますか?僕はこんなに長いこと歌を作っているのに、正直あります。その場合、創作活動を継続するには、安全な表現の場=安心して試行錯誤できる場所が必要です。
(Wei et al., 2005)
実践方法:
完成度を求めすぎず、“ラフスケッチ”としての創作を定期的に行うことで、他者の評価にとらわれない自分だけの表現スタイルを育てることができます。
また、心理学では「自己開示を受け入れてくれる環境が、愛着不安を和らげる」とされており(Laurenceau et al., 2004)、仲間内の小さなグループやオンラインの非公開コミュニティなどが有効です。
SoundCloudやnote、Instagramの非公開アカウントで、信頼できる人にだけ作品をシェアするのも1つの方法です。「評価される場」ではなく、「気持ちを置いておく場所」として機能させることが重要です。
3. 表現を“対話”に変える:共感とつながりを意識した歌づくり
「つながりへの強い欲求」がある一方で、それがうまくいかないときに「見捨てられ不安」が強まる傾向はありますか?僕はあります。
この特性を歌づくりに活かすには、「表現を一方通行ではなく、対話のきっかけにする」という視点が有効です。(Bartholomew & Horowitz, 1991)
実践方法:
歌詞を自分の気持ちだけで完結させるのではなく、「この歌を聴く誰かに語りかける」形で書いてみるのもよいかもしれません。
リスナーの存在を意識することで、「共有された孤独」が生まれる可能性があります。
実際に、Koole & Tjew-A-Sin(2011)は、音楽が「感情的共感」を高める手段として有効であり、孤独感の軽減や社会的つながりの強化に役立つと報告しています。
まとめ
単なる技術だけでなく、感情の扱い方と表現環境は、歌を書く生活に深く関係しています。以下の3つの観点が、創作を助け、自己肯定感や人とのつながりを育てる鍵になるかもしれません。
自己理解と感情の言語化:日記や詩を書く習慣で自分の気持ちをつかまえる
安全な表現の場づくり:小さく、信頼できる場所で発表する
表現を“対話”に変える視点:誰かとのつながり(共有された孤独など)を想定して歌詞を書く
参考文献:
Mikulincer, M., & Shaver, P. R. (2007). Attachment in Adulthood: Structure, Dynamics, and Change. Guilford Press.
Pennebaker, J. W. (1997). Opening Up: The Healing Power of Expressing Emotions. Guilford Press.
Wei, M., Russell, D. W., Mallinckrodt, B., & Vogel, D. L. (2005). The Experiences in Close Relationship Scale (ECR)—Short Form. Journal of Counseling Psychology, 52(4), 602–614.
Laurenceau, J. P., Barrett, L. F., & Pietromonaco, P. R. (2004). Intimacy as an Interpersonal Process. Handbook of Closeness and Intimacy, 61–78.
Bartholomew, K., & Horowitz, L. M. (1991). Attachment styles among young adults: A test of a four-category model. Journal of Personality and Social Psychology, 61(2), 226–244.
Koole, S. L., & Tjew-A-Sin, M. (2011). Musical mood regulation and the social self. Psychology of Music, 40(3), 271–283.
今回はここまで。また次回にー。
吉祥寺のボイトレスクール「ZIGZAG MUSIC SCHOOL」の無料体験レッスンはこちら!