音痴はなおらない!
そう思い込んではいませんか?
今回は脳科学の視点から「音を外す仕組み」や「改善の可能性」を丁寧に解説しつつ、実践的なトレーニング方法を紹介していきます
音痴の原因と仕組み
「音が取れない」「音程がズレてる」と言われると、誰でもちょっと落ち込みますよね。
自分ではしっかり歌っているつもりなのに、なぜか音が外れてしまう。
この“ズレ”の原因は、単なる経験不足やセンスの問題だけではないことが、近年の研究から分かってきました。
ここでは脳の中の「音を聴き取る仕組み」に脳科学の観点から着目していきましょう。
「先天性アミュージア」
音痴の中でも特に「音が取れない」タイプは、脳科学では「先天性アミュージア」と呼ばれます。
アミュージアの人は、音程の微妙な違い、たとえば半音(ピアノの鍵盤で隣り合う2つの音の差)が聞き分けにくいという特徴があります。
ただし、ここで大切なのは日常会話には何の問題もないという点です。
つまり、言葉や会話の音は問題なく聞き取れていても、「メロディの音高の差」だけがうまく処理できない状態なのです。
この症状は「聴力が悪い」というよりも、音の高さを感知し、記憶して再現する力に問題があるケースが多いとされています。
脳内ネットワークの結びつきが弱いから起こる
脳画像研究によれば、音痴の人には聴覚皮質(音を聞くエリア)と右前頭葉(音を判断し、声に出すためのエリア)を結ぶ神経繊維が弱いという傾向が見られるそうです。
この神経回路は「聞いた音を声に変換する」ための高速道路のようなもの。
この通り道が狭かったり渋滞していると、どれだけ耳で正確に音を捉えても、声に出す段階でズレが生じてしまうのです。
伝言ゲームでも間に人が何人もいて混乱しているとはじまりと最後でまったく答えが違うものになってしまいますが、この結合が強く整理されていると伝言ゲームの間に入る人数が少なくなり、指示が正確に届くようになるというわけです。
歌がうまい人の脳との違い
では、歌が上手な人の脳では何が起きているのでしょうか。
研究では以下の3つの機能がスムーズに連携していることが分かっています。
・微細な音程差を聞き分ける感覚精度
・音を一時的に保持して比較する記憶力
・「こう歌うべきだ」と予測しながら発声し、ズレがあれば即座に修正する調整力
つまり、耳と口の連携力が高く、音を聞いて即座に声に変換する仕組みが強化されているのです。
一方、音痴の人はこのどこかに“弱点”がある可能性があり、それが音程のズレに繋がっていると考えられます。

どうやって音痴を治すか?
ここでは音痴を治すための脳の仕組みと、具体的なアプローチについて見ていきましょう。
まず重要なのは、「音を聞き分ける力を鍛える」ことです。
こういった試みを通じて、確実に音痴は改善していくでしょう。
録音などでフィードバックをする
⾃分の声がどれくらいズレているのかを「⽬で⾒る」「⽿で聞き返す」
そういったことが脳の学習回路を効率的に回すのに役⽴ちます。
自分が出した声を録音をしたり、また編集ソフトやアプリで実際の高低差を眼で見て判断できるようにしていきましょう。
録音した音程を目視できるソフトMelodyneといったソフトの活用もおすすめできます。
音痴をなおしたい方はこちら!⼩さなステップで反復する
音痴を改善するためには、一足飛びに歌が上手くなることを目指すのではなく、段階を踏んで神経のつながりを再構築していくことが必要です。
具体的には、以下のような流れを意識しましょう。
①単音の聞き分けと再現
②2音(上下音程)での聞き分けと再現
③短い旋律の模倣
④実際のフレーズの歌唱
いきなり好きな曲を歌っても成果が出にくいのは、まだ脳の準備が整っていないからです。
スポーツの筋トレと同じで、小さな負荷から徐々にステップアップすることで、パフォーマンスが高まっていきます。

音痴改善トレーニング!
音痴の改善には、脳の仕組みに沿ったトレーニングが効果的です。
特に「聞く力」と「出す力」を結ぶ神経回路を鍛えるには、短い音やフレーズを繰り返し、丁寧に模倣する練習が有効とされています。
ここでは具体的な練習方法を3つ紹介します。ぜひ気軽にやってみてください!
音旋律の聞き比べ
まず最初に取り組んでほしいのが、「音を聞き比べて違いを見つける」練習です。
やり方はとてもシンプルです。
①3〜5音の短い旋律を聴く(ピアノ等で弾く)
②その後、途中1音だけが違うパターンを入れて録音する
③どこが違ったかを聞き分ける
これを繰り返すことで、脳の「音を記憶し、比較する能力」が高まっていきます。
旋律の違いが分かるようになると、それを声に反映する精度も上がってきます。
自分の再現した旋律と正解の旋律を比べてみると、ズレが見える化されて脳がより正確に学習します。
単音あわせの練習
「音が外れる」という悩みがある人にとって、いきなり歌うのはハードルが高いものです。
そんなときは、ハミング(鼻歌)から始めるのが効果的です。
【練習方法】
①ピアノやアプリで単音を鳴らす
②その音に合わせて「ん〜」とハミング
③声がピタッと合うまで何度か繰り返す
※ピアノと声の音は一致したときに、音がひとつになるような響きを感じることがあります。
その感覚が、脳と声の回路が合致したサインです。
はじめは外れて当然ですので、少しずつズレを修正しながら繰り返していきましょう。
録音などを使うと更に客観的に練習ができておすすめです。
音痴をなおしたい方はこちら!言葉のイントネーションの真似
最後に紹介するのは、「メロディ」ではなく「言葉の音の高さ」に注目した練習です。
私たちは日常会話でも自然に音程を使っています。
たとえば「えっ?」「ほんとに?」といった疑問形の言い回しには、特有のイントネーション(音の上がり下がり)がありますよね。
このイントネーションを真似することも、音感を鍛えるトレーニングになります。
ドラマやYouTubeのセリフを耳コピして、そのまま声に出してみる
同じフレーズを何度も繰り返して、音程をコピーしてみる
こうした「話し言葉での音の再現力」も、音痴改善の大きな助けになります。
まずはメロディよりもシンプルな音の流れを身体に染み込ませましょう。

練習を続けるための心構えと注意点
音痴を改善するためには「正しい方法で継続すること」が欠かせません。
脳のネットワークは一晩で変わるわけではなく、繰り返しの刺激で徐々に強化されていきます。
ですから、音痴改善に取り組むうえでもっとも大切なのは、モチベーションを保ちながら続けることといえるでしょう。
ここでは、挫折を防ぎ、安心して練習を積み重ねるためのポイントをまとめてみました。
結果を焦らず、少しの変化を喜ぶ
音痴改善のトレーニングを始めても、すぐに「カラオケで高得点が取れる」といった大きな成果は出ません。
しかし、ほんのわずかな変化を感じ取ることは可能です。
たとえば…
「昨日より音を外さなかった」
「1回で合わなかった音が3回で合うようになった」
「ピアノと声の響きが重なった瞬間があった」
こうした小さな進歩を自分で見つけて喜ぶことが、次の練習につながります。
練習ノートやアプリで記録をつけるのもおすすめです。
客観的な変化が見えると、「続ければもっと良くなる」という実感がわいてきます。
無理な高音・早すぎるテンポの練習などは避ける
意欲が高いとつい頑張りすぎてしまいがちですが、無理に高音を出したり、はやすぎるテンポでの練習を続けるのは逆効果になることがあります。
声帯は繊細な筋肉です。使いすぎれば筋肉痛のように疲弊し、炎症を起こして声がかすれたり、痛みを伴ったりします。
さらにテンポ感に関しては、「ゆっくり→早く」という基本をおろそかにしてしまうと、「だいたい音程があっている」という状態で次々に感覚をみがいていくことになります。
これはクセになると後々での修正が難しく、しっかりとはじめから無理のないテンポで音を合わせてあげるのが大事になってきます。
疲れを感じたら、迷わず休むことも大事です。
「今日はここまでにしておこう」と切り上げる勇気が、長期的に見て大きな成果を生みます。
感覚ではなく客観的な事実に基づいて練習する
音痴を治す際は、客観的な事実にたよることがとても大事になってきます。
これは逆にいえば感覚で「あっている」「あっていない」という判断をしてしまうと、いつまでたっても治せないということです。
客観的な事実に基づいて修正していくためには、録音やプロの指導を受けることがおすすめです。
ZIGZAGミュージックスクールでは一人ひとりの声帯に基づいたかたちでレッスンのカリキュラムをつくっているので、プロの指導で上達を早めることができます。
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いかがだったでしょうか。
ここまでお話してきたように、音痴の原因は単なる「センスのなさ」ではなく、脳の神経ネットワークの問題です。
適切なアプローチでしっかりとトレーニングしていけばしっかり改善していけるものです。
まずは1音をしっかりあわせるところから地道にトレーニングをして、あこがれのあの人のように自在に歌を歌えるようになっていきましょう!