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ボーカルレッスンコースのブログ

作詞・作曲初心者のための「表現技術」習得ステップ

こんにちは、ZIGZAGの岡です。

作詞・作曲はセンスではないですよ

作詞・作曲において感情を深く伝える表現力は、生まれ持ったセンスではなく、段階を踏んで習得できる「技術」であると僕は考えます。

ここでは、認知科学や音楽心理学の知見に基づき、感情と音の相互作用を意図的に設計する力を身につけるための、4つのステップと具体例を解説します

Step 1: 感情の粒度(解像度)を最大化する

表現の土台は、作詞者自身が感情をどこまで細かく分析できるかにかかっています。単なる「感情」ではなく、その感情の多角的な側面を捉え、表現の幅を広げます。

【留意点】 表現が細かければ良いわけではありません。細かく分析した上で、あえて大掴みな表現を選ぶ場合もあります。

1.1. 感情語彙の専門化

基本的な感情語(例:「嬉しい」「悲しい」)の使用に留まらず、その感情の質、深さ、色合いを表す多様な語彙を意識的に収集・使用します。

• 訓練内容: 自身の日常の感情を記録する際、必ず複数の異なる形容詞や比喩を用いて表現し、感情を構成する要素を深掘りします。

• 具体例:

• 基本感情が「悲しい」の場合、感情の凍結や静かな絶望として捉え、「涙はアスファルトに染み込む」など。この表現が微妙だなぁと思ったら、違う表現を模索する。

• 基本感情が「後悔」の場合、不可逆な時間や重力として捉え、「あの日の重力に引き戻されそうになる」のような表現。これも微妙だと感じたら、違う表現に。今回はあくまで例なので、これで勘弁してください。

1.2. 感情の構造分析

感情の背後にある原因、身体感覚、時間軸、対人関係などを分類し、抽象的な感情を具体的なイメージと言葉に変換する能力を養います。

Step 2: 音楽と歌詞の「相互作用」を設計する

聴き手の感動を最大化するために、言葉とメロディが互いに影響し合う関係性を技術的に設計します。

2.1. 期待値の把握

メロディや和音、リズムが聴き手に抱かせる「音楽的な期待(予測)」を理解します。

長調(メジャー)は前向きな感情、短調(マイナー)は内省的な感情を予測させるなど、音楽の基礎知識が基盤となります。

2.2. 意図的な「予測誤差」の導入

音楽が示す一般的な感情の方向性に対し、歌詞でわずかに異なる視点や解釈を配置します

この「期待の裏切り」が、聴き手の認知に負荷を与え、楽曲に奥深さと強い印象を与える感動を生み出すことがあります。

• 訓練内容: 曲調から予測される主題とは異なる、光の影、あるいは静と動の不整合を意識的に作り出し、歌詞の対比効果を高めます。

• 具体例:

• メジャーコード(明るい)の曲調に対し、光の影や皮肉を込めて、「眩しすぎる光のせいで何も見えない」と表現する。

• マイナーコード(悲しい)の曲調に対し、冷静さや感情の麻痺を表現し、「感情は機能停止。ただ体が熱いだけ」と表現する。

Step 3: 表現を「身体化」し「客観化」する

頭の中の言葉と、実際に音として発せられる言葉の間にあるギャップを埋め、言葉を歌唱表現に直結させる技術を磨きます。

3.1. 詩の朗読と身体表現

作成した歌詞をメロディに乗せず、俳優のように感情を込めて大声で朗読します。この際、発音の強弱、息継ぎの場所、沈黙の間(ポーズ)など、歌唱時のディナーミク(強弱)を言葉の段階で設計します。

• 訓練内容:

• 発音の強弱: どこを強く、どこを弱く囁くかなど、音量変化を指示する。例えば、「僕だけが知っている」の「僕」を強く発音するように意識する。

• ポーズ(間): 聴き手の思考時間として、意図的に沈黙の間隔を設ける。「さよなら…(1拍の沈黙)…だけが真実」のように間を設計する。

3.2. 録音によるフィードバック

メロディに乗せて歌ったものを必ず録音し、第三者の耳で聞く訓練を習慣化します。録音を聞いて、「聴き手にとって、この言葉はどのように聞こえるか?」「感情のトーンは適切か?」を厳しく評価・修正します。

Step 4: 非言語芸術からの「感覚の翻訳」

言葉の世界だけで閉じるのではなく、音楽や視覚芸術など、非言語的な領域から感覚を取り入れ、表現の源泉を拡張します。

4.1. 多感覚的なインプット

小説や詩だけでなく、絵画、映画、風景、環境音など、言葉を介さない様々な芸術や現象に意識的に触れます。

4.2. 感覚のクロスオーバー翻訳

非言語的な芸術から受け取った「感覚」や「ムード」を、言葉と音楽の要素に変換し、両者の連動性を高める訓練を行います。

• 訓練内容: 特定の芸術作品や風景を見て、そこから感じたものを、即座にメモする作業を繰り返します。

• 具体例:

• インプット: 抽象画のぼかし。

• 言葉の翻訳: 「境界が溶ける」「輪郭を失う記憶」。

• 音楽の翻訳: 意図的に曖昧なコードを使用する。

• インプット: 深い森の静寂。

• 言葉の翻訳: 「心臓の音だけが響く」「沈黙という名の暴力」。

• 音楽の翻訳: メイン楽器を外し、空間的な残響を強調する。

これらのステップを通じて、あなたは感情を分析し、それを聴き手に届けるための技術を体系的に習得し、深みのある、印象的な歌詞を生み出すことができるようになるかもしれません。

今月も頑張りましょうねー。



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