こんにちは。ZIGZAG MUSIC SCHOOLの吉松です。
前回は歌ってみたの録音について解説しました。
今回は録音後の編集作業であるMIXについての解説をしていきます。
ある程度のスペックを備えたPCやDAWソフト、音楽の専門知識などが必要のため経験のある人に依頼する方も多いと思いますが、自身でやってみたい!どういうことをしているか知っておきたい!という人は是非読んでみてください。
1. ミックスを始める前の心構えと準備
・楽曲全体の把握とバランス
歌ってみたに関わらずMIXにおいて重要な注意点として、一つのトラック単体だけでミックス作業を行わないことが挙げられます(今回だとボーカル)。ボーカルミックスの目的は、ボーカルの音を作るだけでなく、オケとボーカルのバランスを取る作業という側面が強いからです。常にオケと混ぜて聞きながら調整を進めてください。
• 全体の確認:まず、ボーカル全体を聞き、そのボーカルの「いいところや弱い所」を把握します。そして、どのような仕上がりにしたいか(こんな感じにしようか)という理想を考えます。
• 音量設定:最初に、フェーダーを使ってボーカルの全体的な音量感(レベル感)を調整し、その後は固定して作業を進めることが推奨されます。最終的な音圧レベル(例えば -10 LUFSから -9 LUFS程度)を最初に目指して音量感を決めることで、後のEQやコンプの処理でごちゃごちゃするのを防ぎます。
前段階の処理
本格的なミックス処理に入る前に、ノイズ除去や大きな音量の調整を行っておくと、後の作業がスムーズになります。
• 無音部分のカット:波形として残っている無音の部分は、ノイズが入っている可能性があるため、細かく切って管理することが非常に重要です。
• ノイズ除去:ピッチ修正などの前にノイズ除去をしたいとされています。ノイズ除去ツール(例:iZotopeRXなど)を使って、クリックノイズ、破裂音、バックグラウンドノイズなどを除去します。この際のノイズ処理は、削りすぎると不自然になるため、最低限のレベルに留めておくことがポイントです。
• ピークの処理:録音物に明らかに大きなピークがある場合、プラグインを通る前の段階(プリフェーダー)で、事前にその大きなピークを取り除いておくことが重要です。
2. ピッチとタイミングの調整
ピッチ補正(音程修正)
• 合わせすぎない:ピッチを完璧に合わせすぎてしまうと、表現の幅を削りすぎたり、全体的にのっぺりとした歌唱になりやすかったりします。音を外していてもニュアンスが良いと感じたら残しましょう。
• カーブの調整:ピッチカーブを平坦化しすぎると、不安定さが消える一方で、音程の安定感が失われかねません。しゃくり上げなどの歌い手のニュアンスを残すかどうか判断することも重要です。
タイミング修正
• 子音の注意点:タイミング修正を行う際、カ行(Kの音)サ行(Sの音)若干早めに出す必要があります。逆にマ行(Mの音)やヤ行(Yの音)などは、少し遅めに設定すると良い場合があります。
3. ダイナミクス処理とEQ(音作り)
コンプレッサーの活用(ダイナミックレンジの調整)
ボーカルをオケに埋もれさせず前に出すために、コンプレッサーで音をしっかり圧縮することが非常に重要です。
• 複数段階での圧縮:コンプ1つで強く潰すと違和感が出やすいため、何段階かに分けて徐々にダイナミックレンジを均していくイメージで使います。
• アタックとリリースの設定:アタックは遅め、リリースは短め/早めに設定します。
• ゲインリダクションの目安:針が少し触れるか、または-3 dBから -6 dB程度の軽い圧縮から始めるのが良いでしょう。
• コンプの種類:ざっくりと全体の音量を整えるのには、より自然な仕上がりになる光学式コンプレッサーを用いることがあります。
イコライザー(EQ)での処理
• ローカット(低音成分の除去):最初に、ボーカルに含まれる無駄な低音成分を削ります。
• 不要帯域のカット:不要な帯域をカットすることは、楽曲全体のレベルを上げ、音を聴き取りやすくするために重要です。
• 問題のある帯域の特定:Q幅を狭くして、ブーストしながらゆっくりと周波数を動かすことで、耳障りな音を簡単に見つけることができます。
ディエッサーとサチュレーション
• ディエッサー:サ行などの歯擦音を抑えるために使用します。
• サチュレーション(歪み):音の質感や存在感を演出するために使われます。
今回は作業前の確認からEQ、COMPの使い方について解説しました。
少し長くなってしまったため、次回リバーブなどの空間系についてとマスタリングについて解説していきます。
吉祥寺のボイトレスクール「ZIGZAG MUSIC SCHOOL」の無料体験レッスンはこちら!
