どうも、DinoJr.です。
今回取り上げるのは、現代ポップ/ジャズ/クラシックの境界線を一気に溶かしてしまった音楽家、Jacob Collier(ジェイコブ・コリアー)。
Jacob Collierとは?
「天才」という言葉がこれほど似合うアーティストも珍しいんじゃないかな、と思います。
特にライブでの Audience Choir(観客合唱)は象徴的。
観客にその場でハーモニーを割り振り、ジェイコブ自身が指揮しながら、たった数十秒で巨大なコーラスアンサンブルを作ってしまう。
これが成立してしまうのは、彼が「旋律とハーモニーの重心」を完全に把握しているからで、まるで空間を3Dで見ているような作曲技法ゆえ。
魅力
次に注目したいのが、リズムの扱い方。
彼は表拍・裏拍の解釈だけじゃなく、ポリリズムや拍子の重なりを“遊ぶように”使う。
例えば7/4と4/4を同時に走らせたり、ビートの重心をスライドさせて生まれる「不思議な揺れ」をそのまま楽曲の魅力に変えてしまいます。
一般的には数学的なアプローチに見えるけど、ジェイコブ自身はそれを“縛り”ではなく「音のダンス」だと考えているところが面白い。
そしてもうひとつ重要なのが、マルチインストゥルメンタルの精度。
彼はピアノ、ベース、ギター、ドラム、パーカッション、ボイスなど、ほとんどのパートを自分で演奏できる。
しかも“なんとなくできる”レベルじゃなくて、どの楽器を触ってもその楽器のらしさが出る。
これは単純に練習量だけじゃなく、アンサンブル全体の構造を俯瞰できる能力があるからこそ。
特にベースラインの作り方は上手くて、ハーモニーの補強だけじゃなく、メロディックな役割とリズムの推進力を同時に担っている。
彼の曲を聴くと、ベースが縦にも横にも動いているように感じるのはそのせいです。
制作面では、ジェイコブは宅録の極みみたいなスタイルを20代前半で確立してしまった。
部屋のベッドの上で、Logic の中に膨大なトラックを積み重ね、ハーモニーの海を作り出す。
これがYouTubeでバズったことは有名だけど、実はその過程で彼は
「自分の脳内のハーモニーを、最短距離で音にする方法」
を見つけたんじゃないかと思う。
2016年以降はQuincy Jones、Herbie Hancock、Chris Martin(Coldplay)など、音楽界の巨人がこぞって彼を支持し始める。
ここからジェイコブは“天才少年”から、“現代音楽のキーパーソン”へと完全にステップアップした。
さらに近年の『Djesse(ジェシー)』シリーズでは、世界各地の伝統音楽やクラシック、R&B、ポップスまで縦横無尽に融合していて、
単純な“多重録音の天才”という枠をはるかに超えている。
特にストリングスアレンジの美しさは異常で、コード進行そのものよりも、各ボイスの“動き方”で感情を作るのがジェイコブの真骨頂。
個人的にジェイコブから学べるのは、
「音楽は言語じゃなくて“空間そのもの”なんだ」
という発想の柔軟さ。
彼の音楽を聴くと、コードやリズムという概念が“説明のための言葉”に過ぎないことに気づかされます。
実際の音はもっと自由で、もっと有機的で、もっと遊び心がある。
ジェイコブはよく「音楽は自分の外側に存在していて、僕はただそれを見つけるだけ」と語っているけど、
それってすごくシンプルでありながら、音楽家にとって一番むずかしい感覚でもある。
彼の音楽がこんなにも伸びやかで優しいのは、そういう“見つける姿勢”が根底にあるからなんじゃないかな、と思う。
ということで、今回はJacob Collierでした。
ハーモニー、リズム、アンサンブル──すべてをアップデートしてしまった現代の音楽家。
もしまだ聴いたことがない人は、『Djesse Vol.2』あたりから入るのが自然かもです。
DinoJr.でした!
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