どうも、DinoJr.です。
今回紹介したいのは、オーストラリア発のネオソウル・バンド Hiatus Kaiyote(ハイエイタス・カイヨーテ)。
Hiatus Kaiyoteとは?
ブラックミュージックの文脈にありながらも、そのサウンドはどこか異世界的。
ソウル、ジャズ、R&B、エレクトロニカ、プログレまでを飲み込み、まるで有機的に呼吸しているような音楽を作るグループです。
まずメンバー構成から見ると、ボーカル兼ギターのNai Palm(ネイ・パーム)を中心に、サイモン(ベース)、ポール(ドラム)、ペリン(キーボード)の4人。
それぞれが多彩な音楽的バックグラウンドを持っていて、全員が作曲に関わるスタイルをとっています。
つまり“バンド”というよりも“集合体としてのクリエイション”に近いと言えます。
魅力
彼らの音楽を特徴づけるのは、まずリズムの流動性。
一見シンプルなグルーヴに聴こえても、内部では細かいポリリズムや変拍子が絡み合っていて、拍を数えるほどに混乱するほど緻密。
しかし不思議と“難解”に聴こえないのは、リズムの複雑さよりも“うねり”を重視しているから。
この「揺れの中の一体感」は、まさに現代ネオソウルの極致だと思います。
ドラムのPaul Benderのプレイは、ヒップホップ的なタメとジャズ的な流動感を同時に持ち合わせていて、特にキックとスネアの間にある“微妙な間”のセンスが抜群。
その上でNai Palmのギターやボーカルが自由に泳ぐように重なり、リズムの上に「旋律の自由度」を生み出しています。
次にハーモニーの感覚。
彼らのコード進行は、いわゆる“おしゃれR&B”を超えていて、かなり異質です。
ジャズやフュージョンのテンションワークを取り入れつつ、時には全く調性感のないコードを突然挿入する。
でもそれが不自然に感じないのは、Nai Palmのメロディセンスとヴォーカルの表現力によるもの。
彼女の歌は単に音程を追うのではなく、コードの“響きそのもの”を歌っているような印象があるように思えます。
特に『Nakamarra』や『Molasses』のような楽曲では、メロディとコードの境界が曖昧になっていて、まるで音が浮遊しているよう。
これは彼らがジャズの「理論的正しさ」よりも、感覚的な“サウンドスケープ”を優先しているからこそ生まれる独特の空気感です。
サウンドプロダクションの面でも非常に興味深く、アナログとデジタルの質感が絶妙にブレンドされています。
生楽器の有機的な質感と、電子的な音処理を“同居”させることで、リアルとファンタジーの境界を曖昧にしている。
そのバランス感覚はFlying LotusやThundercatらL.A.シーンとの共鳴も感じられるし、同時にオーストラリア特有の乾いた雰囲気もある。
そしてもうひとつ重要なのが、“ネオソウル以降”の精神性。
Erykah BaduやD’Angeloが築いた流れを継承しつつも、Hiatus Kaiyoteはそこに“自然”や“生命”の感覚を取り戻している。
人工的なR&Bの進化に対して、彼らはむしろアナログで感覚的な方向に振り切っていて、その点では現代のブラックミュージックの中でも異端的な存在です。
彼らの音楽を聴くと、ハーモニーやグルーヴの中に「人間の不完全さ」と「生命のリズム」が同居しているように感じます。
それはまるで、Louis ColeのタイトさやGlasperの理知的な融合とはまた別のベクトルで、“音楽の自然な進化”を体現しているようでもあります。
まだ聴いたことのない人には、まず『Choose Your Weapon』をおすすめします。
一曲一曲が複雑なのに、全体を通して聴くとまるで一枚の有機体のように流れていく。
そこに漂う“人間の知性と本能のあいだ”こそが、Hiatus Kaiyoteの真骨頂だと思います。
DinoJr.でした!
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