ZIGZAG MUSIC SCHOOL講師の永岡愛実です。
歌っている自分の表情、どう思いますか?
皆さん、歌っている時の自分の顔って、どう感じますか?zigzag、DECOのレッスン室は鏡がありますので、ぜひ自分を観察しながら、一曲とおして歌ってみてください。
笑顔?眉間のシワがセクシー?無表情で1曲歌い切ってる?
プロを目指す方にとって、表情も「表現のひとつ」です。
今回は私が担当する事の多いミュージカルの歌の歌い方、歌う時の表情についてのお話です。そこを軸に書いてはいますが、プロとして歌を長く続けたいと考えている、でも自分の表情についてリアルで質問したりするのはちょっと恥ずかしい、などの葛藤がある方にも有効かと思いますので、気軽な気持ちで読んでみてくださいね。
意識的か、無意識か。それが重要です
ロックでシャウトするのに歌のおねえさんみたいな柔らかい笑顔は要らないし、たぶん難しいです。(竹中直人さんやコロッケさんならやってくれるかもです)そして表情の整ったアイドル歌手が必ずしも売れるわけではないし、無表情で歌うアイドルだっています。それが「意識的か無意識か」が重要なのです。
例えば私が昔通っていたオペラの研修所に、歌う間じゅう無意識でまばたきをする方がいました。
そもそもまばたきってどのくらいが自然なのでしょうか。
調べてみると1分に20回、3秒に1回程度は生理的にしているものみたいです。その方は歌うことに集中するとパチパチパチ…と高速でまばたきしてしまうので、まぁ確かに当時素人だった私にも不自然に見えていました。
でも、瞬きやめましょう、と簡単に割り切れる事ではないんです。私自身はまばたきより、逆に閉じる回数が減ってしまう、目を見開いてしまうクセがありました。(今回まばたきの平均回数調べて結果を見ても「意外と多いな…」と感じるので、普段の生活でもどちらかというとまばたき少なめで生活しているのでしょうね。)
過度のまばたきも見開きも、どちらも緊張、集中などによる物ですが、見開いてしまう人には意識的なまばたきは有効であり、まばたきを無意識にしてしまう方には意識的に目を見開くことが一時的にはとても有効なのです。現にその学友も目に意識を向けることで改善されていきましたし、私はまばたきできるくらいの余裕があるか自身を内観できるようになる事でだいぶ改善しました。
一時的にとは…勘の良い方はお気づきかと思いますが、反対のことを意識的にやっていて、またそれが癖になってしまったら本末転倒なのです。大切なのは自分で自分をコントロールできているか、というところです。
それしかできない。と多くの中からそれを選んでやってる。は明らかに違うから
これも例えですが、オペラには「狂乱」などと精神異常状態の登場人物も登場します。ミュージカルヒロインは、みんなに愛される優しいけれど芯の強い女性が多いですが。オペラのヒロインは結構浮き沈み激しい人多くない?と個人的には思ってます。
ちょっと詳しく具体例話しますと、トマという作曲家の作品「ハムレット」、その主人公ハムレットの婚約者、オフィーリアというヒロインに当たる人物。彼女は王子さまの妃になるような本物のお嬢さまですが、仇に復讐することに全力を注ぐようになった、恋人だった王子さまは狂ったように自分に辛く当たり、その上その王子さまに父親を殺されたりして、精神を病んでしまいます。
画家ミレイによるオフィーリア
終盤に、まさに躁鬱のような、ジェットコースターのように心が揺れ動く独白シーンがあるのですが、そういう役なら目を見開いていてもリアリティありますが…これも「意識的にやる」ならば効果的で、無意識にやってしまうなら、それはそういう役しかできない、というハンデになります。
ミュージカル「ノートルダムの鐘」での魅せる表現
ミュージカル「ノートルダムの鐘」(原題はノートルダムのせむし男)をご存知でしょうか。あっ!まだ観たことのない方で少しでもネタバレは避けたい!という方は、Codaまで飛ばしてください。(若干使い方が違う。。ただの印だと思ってください)
-----to Coda-----
この主人公「カジモド」は、みんなに蔑まれる存在の象徴のように、劇中顔は汚れ、表情も歪み、背中も左右不均等に丸めて演技をします。その姿で高難度の歌を歌ったり、演技をするのでなかなかハードルの高い役ですが、演出として最初はカジモド役の演者さんは普段の顔、汚れてないし(演じる方は8割がた)イケメンで姿勢も美しく堂々と出てきます。そこから、観客の前で顔を汚し、背中を丸めてカジモドになっていきます。ずっと背中を丸めて顔を歪めていれば良いわけではなく、最初と最後は堂々と美しい姿で「私が主役です」感を持って登場しなくてはならないのです。しかも不自然な格好を2時間続ければ体に負担がかかるし、他の役をすることができなくなって役者生命が縮んでしまうから、体を解してもらったり、ストレッチなど自己調整をしています。舞台にリアリティを出すために自分を歪めたあとは、また自分を自分史上最高のところ目指してニュートラルに戻していくのです。
-----ーーCoda-------
そう、ここまで読んだ方はお分かりかと思いますが、自然だと感じる表情、美しいと感じる均整のとれた立ち姿で立つということは、ミュージカル俳優ならばその仕事を続ける限り求め続けなければならないことなのです。
四季に限らず、舞台を観て「生きるって素晴らしい、元気を貰えた、明日からがんばろう」などとお客さまに前向きな気持ちになってもらうために、日々役者さんたちは自分を磨いています。ディズニーヴィランの役をやることになったら、舞台上では顰めっ面をしなければれならない時間は増えます。
でもそれは「役に必要だから意識的にやっている」だけ。もしくは、その役だけやっていればいいや、となれば私生活もずっと仏頂面で過ごせばいいわけですが、私の存じ上げている役者の仲間や先輩方に、一つの表情、表現しかできない方はいままで居なかったです。
百面相をカメラに撮って観察するとか、気になった人の表情をバレないようにコッソリじっくり観察する。バカみたいだと感じることを、真剣に全力でやる。それが自分の職業に必要なことならば、です。最高の表情と最低な表情、やる役によって披露の機会は変わりますが、それはできません、とならないために幅を広げていけたら良いですよね。
もし恥ずかしいなと思ったら
もしもここまで読んでそんなの恥ずかしすぎる!!と思ったら、無理にプロのミュージカル俳優を目指さなくても良いのです。でも、恥ずかしい、けどできるようになりたいと思ったのなら…
ぜひ一度レッスンを受けにいらしてください。
私も一緒に色んな表情をします!めぐみ先生、それはナイ。と笑ってもらっても大丈夫(笑)
独りだと不安でも、一緒だったら練習できるかもしれません。そして、いつかは恥ずかしさを乗り越えていきましょう。
いつでもお待ちしております(^^)
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