こんにちは、ZIGZAGミュージックスクールの岡です。
突然やってくる「燃え尽き」
長く音楽活動を続けていると、ある日ふと「もう無理かもしれない」と感じてしまうことがあります。
今回は、それを「燃え尽き(バーンアウト)」と呼ばれる心理状態と仮定し、かなり簡潔にではありますが、対策を書いてみたいと思います。
元大学教授で現在はエッセイスト、ジャーナリストをしているジョナサン・マレシックは、燃え尽きの原因の一つとして「仕事に対する期待と現実のギャップ」を挙げています。
音楽活動では特に、自己表現と評価のギャップ、経済的不安、孤独感など、燃え尽きを招く要因が多くあります。
では、具体的にどんなパターンがあるのでしょうか?
音楽活動にありがちな「燃え尽き」5選
ここで、音楽活動にありがちな「燃え尽き」を5つに絞って挙げてみましょう。
1. 成果が見えず、自信を失う
頑張って曲を作っても、再生数や反応が少なく「意味があったのか」と感じてしまう。
2. SNSや他人と比べて落ち込む
同世代のアーティストの活躍を見るたび、同じくらいの長さを生きているのに、自分はなにも実のあることができていないのでは…?と不安になったり、落ち込んだりする。
3. 完璧主義で、自分を追い詰める
「中途半端な作品は出せない」とハードルを上げすぎて、手が動かなくなる。
4. 生活リズムが崩れ、体調もメンタルも不安定に
夜中に作業し続けたり、不規則な生活が続いて疲労がたまり、認知能力が慢性的に下がる。
5. 「好き」だったはずの音楽が「義務」に感じる
楽しさよりも「やらなければ」という義務感が強くなり、これまで得られていたはずの喜びを感じにくくなる。
認知行動療法(CBT)でできる「心のリセット法」
認知行動療法は、「考え方(認知)」と「行動」のクセを見直すことで、ストレスへの対処力を高める心理療法です。
音楽活動にも応用できます。
以下のようなステップで取り組んでみましょう。
ステップ1:自分の思考パターンに気づく
まずは、燃え尽きを感じたときにどんな思考が浮かんでいるかを記録してみましょう。
例)
・「誰も聴いてくれない=自分には価値がない」
・「うまくやらなきゃ=失敗は許されない」
→ このような極端な思考は、心を疲れさせます。
まずは自分を外側から観察するように捉え、自分の内側に生まれる「自動思考」をキャッチするところから始めます。
そうすることで、ネガティブから心の距離を取ることが目的です。
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ステップ2:現実的な視点で見直す
認知行動療法では、極端な思考を「中間の言い方」に変える練習をします。
例)
・「まだ再生数は少ないけど、反応してくれた人もいた」
・「完璧じゃなくても、まず形にしてみるのが大事」
→ 思考を柔らかくすることで、感情の波が穏やかになることがあります。
人によってはこの行程が、「これって単なる誤魔化しでは?」「逃げているだけでは…」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、そういった完璧主義(間違いや失敗に潔癖になる怠惰)が、既にあなたの足を止めているのだとしたら、一度取り入れてみる価値があると言えるのではないのでしょうか。
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ステップ3:小さな行動を積み重ねる
心が疲れているときは、モチベーションを待つより「小さな行動」を積み上げる方が効果的です。
例)
・毎日1小節だけ作曲
・SNSに短いメモや詩を投稿
・自分のためだけに曲を1つ作る
→ 目的を「評価」から「実感」に切り替えます。
こうすることで、「作業興奮」が起き、事前に予想していた以上の長さで作業が続くこともありますし(もちろん続かなくてもよいです。ここで大切なのは、「小さな行動をとれたかどうか」。)、以前ご紹介した「内発的動機」を思い出しやすくなります。
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ステップ4:活動の「意味」を見直す
なぜ音楽をやっているのか?
どんなときに「やっててよかった」と思えたのか?を、言葉にしてみるのもよいかもしれません。
→ 「誰かとつながれた」「自分の気持ちが救われた」など、内側のモチベーションに立ち返ることが、再スタートの力になることもあります。
とはいえ、自分がやっていることを一言で言い表すのは、正直かなり難しいことだと思います。
もし仮に言い表すことができたとしても、取りこぼしている意味が沢山あるような気がして、なかなかしっくりこないかもしれません。
でも、それで大丈夫です。
ここで大切なのは、「完璧な解答」をつくることではなく、「自分のやろうとしていることにもきちんと意味がある」ということを思い出すことです。
おわりに
ここまで簡潔に燃え尽き(バーンアウト)対策を書いてきましたが、この一連の流れだけが対策法ではありませんし、人によっては全く効かないこともあると思います。
人間はそこまで単純ではないですもんね。
それでも、何らかの情報に触れていること自体が、状況をほんの少しだけ良い方法に変えてくれることもあります。
例え一度やめてしまったって、永遠にやめてしまわなければ、全く問題ありません。
焦らずいきましょう。
というわけで、また次回に。
2025.4.9に、新しいアルバムを出しました。